フランスは「ジェンダー・ニュートラル」な表記はフランス語を脅かすとし、学校での使用を禁止した。
フランスの言語を守るアカデミー・フランセは、学校の教師に対し、教室で「ジェンダー・ニュートラル」な単語の綴りを使うのをやめるよう指示したという。
ジェンダー・ニュートラルに配慮したフランス語の新しい綴りは、言葉を「より包括的」にするために、フルストップを使って単語を区切り、男性と女性の両方の語尾を含めるようにしている。
例えば、「友達」を意味する単語「ami」は、女性の「e」という語尾を含めるために「ami.e.s」と表記されるが、発音は通常通りらしい。
しかし、フランス語の保護を担当するアカデミー・フランセーズは、この動きは「(フランス語の)実践と理解に有害である」と述べる。
中間点を導入することで、フランス語は「より包括的」になると主張されているが、一方で書き言葉と話し言葉の間に違いが生じ、フランス語の習得が難しくなり、フランス語の存在自体が脅かされると批判されているのだ。
優先教育担当のナタリー・エリマス氏は、フランス語の「性別を区別しない(ジェンダー・ニュートラル)」化を推進しても、フランス語の人気は上がらず、むしろ名詞に性別を付けない英語を学ぶ人が増えるだろうと述べる。
「インクルーシブ・ライティングの普及により、すでに世界で準覇権を握っている英語は、確実に、そしておそらく永遠にフランス語を打ち負かすことになるでしょう」と、禁止令が発令された際に語っている。
フランスの教育大臣であるJean-Michel Blanquer氏は、単語の真ん中にドットを使用することは、失読症のような学習障害を持つ人々にとっても「障害となる」と述べる。
これに対し、フランス最大の教職員組合のひとつである左派のSUDは、独自の声明を発表して、この判決を無視するよう教師に呼びかけているという。
背景にはフランス語独自の事情があるようだが、このようにジェンダー・ニュートラル(性別を区別しない)化が、世界中で言語にも多大な影響を与えているのである。